RECORDsの取組み

【学会報告】第99回 日本産業衛生学会:その3

【学会報告】第99回 日本産業衛生学会:その3
目次

RECORDsメンバーが第99回日本産業衛生学会において発表

2026年5月27日~30日の4日間、大阪で開催された第99回 日本産業衛生学会において、RECORDsメンバーが登壇しました。(オンデマンド配信:2026年6月23日~8月17日(正午))

テーマ:脳・心臓疾患での労災認定事案における心血管疾患リスクの保有状況

 【日時】2026年5月30日(土)14:00-15:00 【スタイル】一般口演
 【演者】松尾 知明
 【内容】過労死等の原因として長時間労働などの過重負荷が注目される一方で、労働者自身が有する健康上のリスクも重要な要因です。本研究は、脳・心臓疾患の労災認定事案における心血管疾患リスクの保有状況を明らかにし、一般労働者集団の健診データとの比較を通じてその特徴を検討しました。分析の結果、心血管疾患リスク保有状況は、一般労働者集団より労災認定事案で顕著に高いことが示されました。脳・心臓疾患の労災認定事案の多くで事案発生前の過度な長時間労働が認められていますが、本研究の結果は、心血管疾患リスクを保有する労働者に長時間労働等の過重負荷が加わることの危険性を改めて示すものとなりました。過労死防止対策としては、労働時間という外的要因を管理するだけでなく、健診等で把握できる内的要因に基づき、適切な事後措置や就業配慮を講じることも重要と思われます。


テーマ:道路貨物輸送業における労災認定された精神障害事案の検討―H22~R4年度の13年間―

 【日時】2026年5月30日(土)14:00-15:00 【スタイル】一般口演
 【演者】茂木 伸之
 【内容】道路貨物運送業は、精神障害による労災請求件数や認定件数が多い業種の一つであり、過労死等防止対策及びメンタルヘルス対策が必要と考えられます。本研究では、平成22年度から令和4年度までの13年間に精神障害として労災認定された道路貨物運送業および、運輸に附帯するサービス業の428件を対象に、認定事案の特徴を分析しました。認定件数の約88%が男性で、発症時・死亡時ともに40代が最も多いことが分かりました。道路貨物運送業の就業者総数は、197万人のうち男性が157万人(総務省労働力調査(2024年))であり、約80%を占めていることが、男性が多い要因と考えられます。決定時疾患名は、道路貨物運送業及び全業種において、うつ病エピソード、適応障害、心的外傷後ストレス障害の順で多く、道路貨物運送業では、適応障害が全業種と比較して約6%多いことが明らかとなりました。業務における心理的負荷は、過重労働に関連する出来事「強」の「仕事の量・質」と、特別な出来事の「極度の長時間労働」を合わせると、運転業務及び非運転業務ともに約50%を占めていました。その次に多い出来事は、運転業務では交通事故等に関連する「事故や災害の体験」、非運転業務では「対人関係」で、それぞれ約20%でした。このことから、過重労働対策として適切な労働時間管理等が必要であると考えられます。また、過重労働は睡眠不足や疲労を引き起こす要因があるため、特に運転業務では業務中の交通事故等の影響を及ぼす可能性があると示唆されます。また、対人関係の対策には様々なハラスメント対策をすることが必要であると考えられます。


テーマ:過労徴候しらべ改訂版の妥協性の検討―属性による差と他の変数との相関の探索的検討

 【日時】2026年5月30日(土)15:10-16:20 【スタイル】一般口演
 【演者】木内 敬太
 【内容】過労徴候しらべ改訂版は、過労死等の労災認定事案から抽出された過労の徴候を基に開発された質問票であり、現在その信頼性・妥当性の検証が進められています。本研究では、日本の労働者約1万人を対象としたWeb調査データ(有効回答6,936件)を用いて、対象者の属性による過労徴候の違いと、過労徴候と他の変数との相関を探索的に検討しました。分析の結果、過労徴候は多くの属性で有意な差が認められました。特に、年代、休暇中の休息の質や平日・休日の睡眠の質が高いほど過労徴候は低く、週の労働時間が長いほど過労徴候は高い傾向がみられました。また、過労徴候はリカバリー経験とは小さな相関を示した一方で、ストレス反応や抑うつ症状、脳・心臓疾患の徴候とは中程度の相関を示しました。この結果から、過労徴候しらべは、過労によって増加し、休息によって回復する過労の徴候を的確に捉えていることが示唆されました。


テーマ:労働時間の正確性に関する認識と時間外労働の関連:事業場を対象とした横断調査

 【日時】2026年5月30日(土)14:00-15:00 【スタイル】一般口演
 【演者】高田 琢弘 
 【内容】長時間労働の削減には、労働時間を適正に把握するための取り組みを推進していくことが必要です。本研究では「労働時間の正確性に関する認識」に着目し、事業場を対象とした横断調査を実施して、労働時間の正確性に関する認識と時間外労働および労働時間把握方法との関連について検討しました。調査は全国20,000事業場を対象に実施し、2,776事業場から有効回答が得られました。分析の結果、把握された労働時間が正確であると認識している事業場が約92.5%であり、そのような事業場では、100時間超の時間外労働を行っている労働者の割合が小さく、タイムカード・ICカードや出勤簿を用いている割合が高かったことが示されました。これらの結果を踏まえると、労働時間を適正に把握できていると認識している事業場では、労務管理体制が整っており、長時間の時間外労働を行っている労働者の割合が小さい可能性が推察されます。なお、本研究では、事業場の安全衛生管理担当者に調査への回答を求めており、出退勤データ等の客観的な指標による検討は行えていません。今後は、より妥当性の高いデータを用いた検討を行っていくことも必要であると考えられます。